早稲田大学 文化構想学部 表象・メディア論系3年次からが対象のゼミです。2017年から2020年度までは「クリエイティブ・メディアResearch&Designゼミ」の旧称で、2021年度から現名称に変わりました。当ゼミに興味がある方は、以下の情報を参考にしてください。
シラバス
「テクノロジーは社会問題の万能薬である」と考える人間中心的な科学技術主義によって社会を設計 してきた結果、政治不信が世界中を覆い、貧富の差が拡大し、地球環境の生態系は元に戻ることができ ないほど破壊され、人の生きる世界はいよいよ狭くなっています。それでも、COVID-19 のパンデミック 以降の時代において、テクノロジーを盲信したり否定したりするのではなく、望ましい未来をつくるた めの一つの手段として捉えられるようになる[1]というのがこのゼミの目的です。そこで、わたしたちは 自然界の「発酵」現象を重要なメタファーとして用いて様々なデザインの試行錯誤を行います。
発酵とはもともと、目に見えない微生物たちがさまざまな有機物から栄養を取り出し、別の物質を代 謝する仕組みを指しています。長い時間の中で、野菜などから乳酸やアルコールといった、人に有益な 物質を取り出してくれるものです。教員であるドミニクは、ぬか床をロボット化する「ヌカボット」の 研究を通して、この構造はインターネットや人間の思考に似ていると考えてきました[2]。比喩としての 「発酵」を考えていくと、現代社会の一般通念に対する別様の考え方が浮上します。短期的思考から長 期的思考、人間中心主義から環境志向、個人主義から関係性志向、成果主義からプロセス志向、還元主 義から複雑系、というように。
人が他者や自然とよりよい関係を結びながら生きていくために、わたしたちはどのような新しいメデ ィアを構想できるでしょうか。このゼミでは、古今東西のメディアや思想を参照しながら、ゼミ生が自 分で未だ見ぬメディアを構想し、かたちにして、最終的には制作+論文のセットでゼミ論を完成します。 新しい技術を独学で身につける学習意欲と、手を動かしながら試行錯誤することを厭わない制作意欲が 求められます。3 年生は主に研究テーマの発掘、4 年生はゼミ論制作に重点を置きながら、前期は積極的 に遊ぶことを目的とした自由研究プロジェクトと自由制作発表を 3 年と 4 年が混ざってグループで行い ます。後期では、4年生はゼミ論を仕上げながら、3年生が主体となって学外展示も行います。
ゼミ生の数だけ、研究テーマが存在します。他者の異質な価値観を尊重し、肯定できる状況をみずか ら作り出そうとする[3]人を歓迎します。
履修モデル
次の講義・演習のうち、少なくとも 1 つは履修済みであることが望ましいです。
・講義『メディア論 1, 2』(オムニバス)・講義『メディア・アートとデジタル表現』・演習『メディア・ アートとデジタル表現』・演習『デザイン・フィクション・ワークショップ』
評価方法
ゼミへの参加と貢献を総合的に評価します。
参考文献
[1] ドミニク・チェン(2020)『未来をつくる言葉―わかりあえなさをつなぐために』, 新潮社 [2] ドミニク・チェン (2019)「メタ床――コミュニケーションと思考の発酵モデル」, 『ゲンロン 10』 所収, ゲンロン, pp.146-155 [3] 渡邊淳司, 伊藤亜紗, ドミニク・チェン, 緒方壽人, 塚田有那(2019)『情報環世界:身体と AI の 間であそぶガイドブック』(NTT 出版)
授業実施曜日・時限 (予定)
2023年度より火曜4限(15:05-16:45)で3、4年合同で開講します。5限はサブゼミを開講する場合もあるので、4,5限は他の授業を入れないでください。
ゼミ選考にあたって
毎年後期に行われるゼミ選考にあたっては「制作物の提出」を重視します。これまでに制作した表現物について、閲覧できる資料を作成してください。表現物は、ただのアイデアで はなく、具体的に表現された形であれば、メディア形式は特に規定しません。特に表現物を制作していない場合は、制作したい表現物の構想を書いて提出してください。提出物のない場合は選考を行わないので注意してください。
これまでのゼミ論テーマ
タイトル | 氏名 | 期 | 卒業年度 | 備考 |
---|---|---|---|---|
雑音下の「聞き取りづらさ」を解消するビートバリアの提案 | 安食星那 | 5 | 2022 | |
欲求充足動画(VLOG)の視聴によるウェルビーイングを高める方法の研究 | べ・ジヒョン | 5 | 2022 | |
外国語会話の不安を解消する「心拍振動装置の提案」 | HSIEH HARRISON | 5 | 2022 | |
人生を”予習”する リアル人生ゲームの制作 | 佐藤 菜夏 | 5 | 2022 | |
セルフインタビューによる自己相対化と他者化の研究 | 小堀玉稀 | 5 | 2022 | |
描き手と被写体双方の満足度を高める新たな似顔絵制作方法の研究 | 小林玉輝 | 5 | 2022 | |
AI ツールを用いたグラフィック制作におけるセレンディピティの研究 | 巽迅亨 | 5 | 2022 | |
VR空間における感覚が人々にどのような影響をもたらすのかについての研究 | 山下新之輔 | 5 | 2022 | |
写真撮影の事前イメージと写真に対する納得感の研究 | 平井 将貴 | 5 | 2022 | |
他者の衣服を借りて自分の声で語ることによる、身体を引き受けることについての研究 | 目黒ほのか | 5 | 2022 | |
人生ゲーム形式のゲームを応用した異文化理解に関する研究 | 野島亘貴 | 5 | 2022 | |
ビデオコミュニケーションにおいて動物型のアバターがもたらす効果の研究 | 武井楓 | 5 | 2022 | |
壺日記デバイスによる本来感獲得の研究 | 近藤碧 | 5 | 2022 | |
共感覚的な日本酒のビジュアルテイスティングの研究 | 高山千香葉 | 5 | 2022 | |
短歌を用いたテキストコミュニケーションについての研究 | 駒谷彩未 | 5 | 2022 | |
公園での子どもの学びと人々の交流を促すパブリック本棚の研究 | 香山千晴 | 5 | 2022 | |
肉体から生じる死穢の消失点の研究 | 大須賀亮祐 | 5 | 2022 | |
祈る対象のデザインと日々の祈りの研究 | 宇佐美友雅 | 5 | 2022 | |
言葉の呪術性を実感する方法の研究 | 野島輝 | 4 | 2021 | |
日常に溶け込む新たな書簡法の提案 | 茂木香頌子 | 4 | 2021 | |
夕焼けの記録を介した有限性に対する認識変化の研究 | 天野凜 | 4 | 2021 | |
孤食を楽しむ『五感で味わうシート』と『味わう伝言ゲーム』の提案 | 正木友依子 | 4 | 2021 | |
気配を用いた孤独感緩和の試み | 犬飼朋花 | 4 | 2021 | |
2度目の死を克服するメディア形式についての研究 | 大槻竜也 | 4 | 2021 | |
anticipated nostalgia の喚起により幸福感を高める方法の研究 | 大原いまり | 4 | 2021 | |
デザインのコンテキストに合わせてフォントを提案するツールの研究 | 帶金真衣乃 | 4 | 2021 | |
モーション・グラフィックスを用いたライフストーリーアニメーションの研究 | 中村祐太 | 4 | 2021 | |
分散認知から考える新しいレシピデザインの研究 | 中根なつは | 4 | 2021 | |
自己を認め、自己を好きになる新たな方法の研究 | 倉本梨紗子 | 4 | 2021 | |
自身の顔を再発見する方法の研究 | 岡田啓吾 | 4 | 2021 | |
和菓子を「読む」ための「和菓子図像学」の研究 | 糸井康子 | 4 | 2021 | 卒論 OPEN AWARD 2022 最優秀賞 |
「戦争の記憶」をデジタルメディアによって継承していく方法の研究 | 土谷優衣 | 4 | 2021 | |
思いやりを育むための手法の提案 | 遠藤 敦 | 4 | 2021 | |
「シンデレラ・ストーリーからの脱却を目指すステレオタイプフリープリンセス
の研究」 | 林崎 美侑 | 3 | 2020 | |
都市空間における監視テクノロジーがもたらす心理的影響の研究
COVID-19 パンデミックで強化される監視社会の動向調査を巡って | 内田佐和 | 3 | 2020 | |
幻を含めた現実観とその体得方法の研究 | 平田純也 | 3 | 2020 | |
「先延ばし」による、無為な一日をなくすための方法論 | 高野瑞季 | 3 | 2020 | |
「生きてるみ」の喚起要素として考察する
「弱さ」への想像性と共感性 | 山本藍衣 | 3 | 2020 | |
「やらなければならないこと」とともに生活を送る方法の研究 | 花井佑佳 | 3 | 2020 | |
公共的な情報発信媒体としての「学生掲示板」の研究 | ⻄ 大知郎 | 3 | 2020 | |
日本の若い女性が Instagram を通して陥っている「可愛い」コンプレックスと ZINE を用いたその克服方法の研究 | 多田夏帆 | 3 | 2020 | |
現代における気配知覚の可能性を探る | 髙谷蓮実 | 3 | 2020 | |
アニミズム感覚を喚起するデザインの研究 | 菅沢若菜 | 3 | 2020 | |
芸術的表現活動を通したウェルビーイングの実現を目指すワークショップの提案 | 島野 史子 | 3 | 2020 | |
「聞き取り辛さ」を補う文字起こしツールの研究 | 小林未奈 | 3 | 2020 | |
他者に対する思い込みを自覚する方法論の研究 | 河本のぞみ | 3 | 2020 | |
「散歩のアウラ」に集中する方法の提案 | 金廣裕吉 | 3 | 2020 | |
アニメーションドキュメンタリーを用いた当事者によるハーフ表象への挑戦 | 佐々木 杏奈 | 3 | 2020 | |
音楽×映像による表現―鑑賞者に「見られている」ことを意識させるミュージックビデオの提案― | 米原秀香 | 2 | 2019 | |
クリティカル・デザインによる、身体的ジェンダーバイアスの観取とバックラッシュの解消 | 髙橋二稀 | 2 | 2019 | |
ウェブ小説執筆のためのプロット投稿ウェブシステムの構築 | 竹田 毬恵 | 2 | 2019 | |
家具の音楽―サティの思想と音楽の多様な在り方― | 藤田 彩人 | 2 | 2019 | |
持続可能な⾐服の消費をデザインする | 須藤 菜々美 | 2 | 2019 | |
感情の制御を描いた SF 作品の研究と提案 | 小田崇仁 | 2 | 2019 | |
“心の健康”のための「感情サプリ」の提案 | 神代 真優 | 2 | 2019 | |
現代における撮影体験を『不便益デジタルカメラ』を通じて再考察する | 宮崎遥 | 2 | 2019 | |
VR 空間を用いた新しい Web 体験の提案 | 佐久間響子 | 2 | 2019 | |
「ニホン英語」の表記化による日本語母語話者の更なる英語理解の試み | 冨岡夏生 | 2 | 2019 | |
食事に合わせた詩検索ツール「poemeshi」の設計
―詩と食事をともに味わうことで、一人の食事の味気なさは軽減されるのかー | 栗本 佳歩 | 2 | 2019 | |
個人間の信用に基づいた、個人の好みに合う飲食店を知る機会創出の考案 | 藤原 奏人 | 2 | 2019 | |
レビューサイトにおける新しい香水の評価方法
| 鈴木愛佳 | 1 | 2018 | |
フィルター加工による現前性の崩壊について
| 石黒太一 | 1 | 2018 | |
ゲームは画面を越えたのか ―ゲームを取り巻く仮想と現実―
| 上野安貴子 | 1 | 2018 | |
Fintech から考えるテクノロジーの未来
| 三木すずな | 1 | 2018 | |
「がまん」を記録するダイエットアプリ 「つもりダイエット」の設計
| 杉町愛美 | 1 | 2018 | |
「自分で寝ることを許さない」不眠を解消する
~寄生生物は宿主を健康にするのか~
| 廣田妃蘭 | 1 | 2018 | |
遠距離恋愛を支援する「心臓電話」の設計
| 吉田櫻子 | 1 | 2018 | |
コメントや書き込みを蓄積することで
成⻑する本の設計
| 宮田泰盛 | 1 | 2018 | |
記憶のために描くこと
| 中野綾 | 1 | 2018 | |
希薄化する人間関係を改善する Web サービス
| 古家広大 | 1 | 2018 | |
デジタル社会とスポーツの関わり
| 酒井 優太 | 1 | 2018 | |
色彩の名づけから見えるもの ―色名に関する研究と制作・調査―
| 田代 天音 | 1 | 2018 | |
ライブ・エンタメの魅力 ~ライブ・エンタメ×食で人生を明るく楽しく~
| 江本 真菜 | 1 | 2018 | |
食べることは演じること
~食から見つける日常を豊かにするヒント~
| 吉田 園子 | 1 | 2018 | |
不便益の観点から提案する地図の新しいかたち
| 草壁 咲月 | 1 | 2018 | |
名前が人に与える影響とイメージ
| 福盛 元輝 | 1 | 2018 | |
聴取履歴の可視化による音楽への愛着の喚起についての研究 | 宮内 晴花 | 卒研 | 2020 | |
日本古典文学のドラマツルギーを利用したデザイン・フィクション型創作法の研究 | 上田 悠人 | 卒研 | 2020 | |
ソーシャル VR コンテンツにおけるバーチャルジェンダーによる性自認の変化― 「バ美肉」文化を例に ― | ボウ ジョウエン | 卒研 | 2020 | |
他者としてのテクノロジーとの共創 | 石田 祐暉 | 卒研 | 2019 | |
現代風にアップデートした屋台等における射的の制作 | 吉満 駿太郎 | 卒研 | 2019 | |
実空間における人々の善い行いの記録と共感を表現するWebシステム「善行マップ」の設計 | 加治 一紀 | 卒研 | 2018 | |
インターネット上における縁の可視化と拡大 | 小川 恭平 | 卒研 | 2018 |