『みんなこうして連帯してきた』ジェイク・ホール著(柏書房)
異なる困難 一致点探す
自分が直面していない困難のために声を上げ、行動することは、なぜこれほど難しいのだろうか。本書は、人種、ジェンダー、階級、障害、移民といった異なる困難を生きる人々が、差異を越えて連帯してきた歴史を丹念に掘り起こす。
労働者階級出身のクィアである著者が紡ぐのは、華々しい成功譚ではない。公民権運動と反戦運動が結びつき世界に抵抗の種をまいた一方で、反人種差別の立場から戦争を批判した黒人活動家が、仲間の黒人たちからも反発を受けたように、連帯の道程は対立や挫折に満ちていた。しかし著者は、失敗の中にこそ学ぶべきものがあると説く。たとえば抗議活動で声を上げる束の間の興奮の中にも、変革の芽は確かに生まれるのだと。
重要なのは、連帯と「アライシップ」(当事者でない人が社会的に疎外されている人びとの擁護者になること)の違いについての考察だ。本来、共通の目的のために対等に闘う相互的な関係を意味していたアライシップが、昨今では非当事者が自己の承認欲求を満たすための行為に変質しつつあると著者は批判する。連帯において大切なのは、異なる抑圧の経験を横断して一致点を見出す相互性だ。
著者は抵抗を一度限りの怒りの爆発ではなく、日々の継続的な営みとして捉え直す。何世紀にもわたって社会に染み込んだ差別がたちどころに消えるはずはない。だからこそ、既存の制度を壊すだけでなく、別様のやり方で新しい構造を構築するという精神に著者は希望を見出す。いま生きている世界が全てだという諦念に甘んじないこと。それが本書で紹介される様々な運動を貫く哲学だ。
今日、マイノリティの権利を脅かす権威主義が世界で猛威を振るっている。本書が照らし出す連帯の歴史は、当事者にもマジョリティに属する人にも、日常の中からより望ましい世界を共に構築するための指針を与えてくれる。異なる困難を生きる他者と手を携えることは、自分自身をも解放するのだ。その希望を歴史が証明していることを、本書は力強く教えてくれる。安藤貴子訳。(2640円)

